営業資料とは?
営業資料とは、顧客の課題と自社の商品・サービスを結びつけ、商談や社内検討を前に進めるための資料です。会社や商品の情報を並べるだけでなく、「誰の、どのような課題を、どう解決できるのか」を分かりやすく示すことが重要です。
- 営業資料の目的は、説明ではなく顧客の判断と行動を促すこと
- 営業資料は複数の顧客に使う汎用資料、提案書は顧客別の個別資料
- 成果につなげるには、顧客の課題から構成する
営業資料とは?提案書との違い・基本構成・作り方を専門家が解説|オリファイ
営業資料の目的は、商品やサービスを詳しく説明することだけではありません。顧客が抱えている課題と、自社が提供する解決策を結びつけ、次の行動につなげることが重要です。
営業資料を見た顧客が、「自社にも関係がありそうだ」「詳しく話を聞きたい」「社内で検討したい」と感じられる状態をつくる必要があります。そのため、売り手が伝えたい情報ではなく、顧客が判断するために必要な情報を中心に構成します。
営業資料と提案書の違い
| 比較項目 | 営業資料 | 提案書 |
|---|---|---|
| 対象 | 複数の見込み顧客 | 特定の顧客・案件 |
| 目的 | 商品やサービスを理解してもらう | 顧客固有の課題に対する解決策を示す |
| 使用時期 | 初回商談から検討初期 | 商談中盤から最終提案 |
| 内容 | 共通する課題、サービス、特徴、実績、料金 | 個別課題、提案内容、体制、スケジュール、見積もり |
| 再利用性 | 比較的高い | 基本的に案件ごとに作成 |
営業資料は複数の顧客に使用できる汎用的な資料であるのに対し、提案書は特定の顧客や案件に合わせて作成する個別性の高い資料です。営業資料を土台として、顧客の課題や条件に合わせて提案書へ発展させる方法が一般的です。
営業資料に必要な主な項目
営業資料には、一般的に次のような内容を掲載します。
- 顧客が抱えている課題
- 課題を放置した場合の問題やリスク
- 自社が提供する解決策
- 商品・サービスの特徴
- 導入によって得られる効果
- 他社との違いや選ばれる理由
- 実績や導入事例
- 料金やプラン
- 導入までの流れ
- 問い合わせや次のアクション
ただし、すべての情報を詰め込めばよいわけではありません。顧客の関心や商談の段階に合わせて、必要な情報を選び、適切な順番で見せることが大切です。
成果につながる営業資料の基本構成
| 順番 | 掲載内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 何の資料かを明確にする |
| 2 | 顧客の課題 | 自分たちに関係する資料だと感じてもらう |
| 3 | 課題を放置するリスク | 解決の必要性を伝える |
| 4 | 解決策 | 課題を解決する考え方を示す |
| 5 | 商品・サービス | 具体的な提供内容を説明する |
| 6 | 導入効果 | 導入後の変化を示す |
| 7 | 選ばれる理由 | 競合との違いを明確にする |
| 8 | 導入事例・実績 | 信頼性を高める |
| 9 | 料金・導入の流れ | 検討に必要な条件を示す |
| 10 | 次のアクション | 問い合わせや商談につなげる |
営業資料では、最初から自社の歴史や商品の機能を詳しく説明するよりも、顧客の課題から始める方が効果的です。顧客が「これは自分たちの問題だ」と感じた後に、解決策として商品やサービスを紹介すると、内容を理解してもらいやすくなります。
基本的には、「顧客の課題」「課題が解決されない場合の問題」「自社の解決策」「商品・サービスの特徴」「導入効果」「実績」「料金」「導入までの流れ」という順番で構成すると、話の流れが分かりやすくなります。
営業資料を作成する手順
営業資料は、いきなりPowerPointを開いて作り始めるのではなく、目的や顧客の課題を整理してから構成・文章・デザインの順に作成します。
1.営業資料の目的を明確にする
最初に、その資料を使って相手にどのような行動をしてほしいのかを決めます。例えば、次のような目的があります。
- 商品やサービスに興味を持ってもらう
- 次回の商談につなげる
- 見積もりを依頼してもらう
- 無料体験やデモを申し込んでもらう
- 社内で導入を検討してもらう
- 最終的な契約を後押しする
「サービスを説明する」ではなく、「商談後に無料デモを申し込んでもらう」のように、相手に期待する行動まで具体化します。
2.ターゲットを具体的にする
次に、誰に見せる営業資料なのかを明確にします。同じ商品やサービスでも、経営者、現場責任者、担当者では、知りたい情報や重視するポイントが異なります。
| 相手 | 重視する内容 |
|---|---|
| 経営者 | 売上、利益、投資対効果、経営上のメリット |
| 部門責任者 | 業務改善、成果、導入体制、実現可能性 |
| 現場担当者 | 使いやすさ、作業負担、具体的な機能 |
| 購買担当者 | 料金、契約条件、他社との違い |
| 情報システム担当者 | セキュリティ、連携、運用・サポート体制 |
幅広い相手に見せる場合でも、最も意思決定に影響する相手を中心に設計します。
3.顧客の課題を整理する
商品やサービスの説明より先に、顧客が抱えている課題を整理します。顧客の課題は、次の3段階で考えると具体的になります。
ステップ1:現在、何が起きているのか
ステップ2:その結果、どのような損失や負担が生じているのか
ステップ3:解決しない場合、どのような問題につながるのか
例えば、単に「営業資料の品質にばらつきがある」とするのではなく、次のように整理します。
営業担当者ごとに資料の内容やデザインが異なり、商品の魅力が統一して伝わっていない。その結果、商談の質が担当者の説明力に左右され、社内検討にもつながりにくくなっている。
顧客自身が「これは自社のことだ」と感じられる表現にすることが重要です。
4.伝えるべき結論を決める
資料を見た相手に最も伝えたいことを、一文で表します。例えば、次のような内容です。
当社の営業支援システムを導入することで、営業活動を可視化し、商談管理にかかる時間を削減できます。
この一文が、営業資料全体の中心メッセージになります。複数のメッセージを詰め込まず、「誰の、どのような課題を、どう解決できるのか」を明確にします。
5.営業資料の構成を作る
目的、ターゲット、課題、結論が決まったら、スライドの順番を設計します。基本的な構成例は次のとおりです。
- 表紙
- 顧客が抱えている課題
- 課題が発生する原因
- 解決の考え方
- 商品・サービスの概要
- 具体的な機能・提供内容
- 導入によって得られる効果
- 選ばれる理由・他社との違い
- 導入事例・実績
- 料金・導入スケジュール
- 次のアクション
商品説明から始めるのではなく、顧客の課題から解決策へ進む流れにすることで、相手が自分に関係する提案として理解しやすくなります。
6.各スライドの文章を作成する
構成が決まったら、各スライドのタイトルと本文を作成します。スライドタイトルは、単なる項目名ではなく、そのページで伝えたい結論にします。
| 項目名だけのタイトル | 結論が伝わるタイトル |
|---|---|
| 導入効果 | 報告業務にかかる時間を月20時間削減 |
| 当社の特徴 | 導入から運用まで専任担当者が一貫して支援 |
| 導入事例 | 営業活動の可視化により商談化率が1.5倍に向上 |
| サポート体制 | 導入後も定例会と相談窓口で継続的に支援 |
各スライドは「1スライド・1メッセージ」を基本とし、詳しい説明を詰め込みすぎないようにします。
7.図解やデザインで分かりやすくする
文章が固まった後に、図解やデザインを整えます。
- 課題と解決策は、Before/Afterで示す
- 業務の流れは、フロー図で示す
- 数値は、グラフや大きな数字で強調する
- 複数の選択肢は、比較表で示す
- 導入前後の変化は、左右に並べて示す
- 色、フォント、余白、図形のルールを統一する
見た目を華やかにすることよりも、相手が短時間で内容を理解できることを優先します。
8.第三者の視点で確認・修正する
完成した営業資料は、作成に関わっていない人にも確認してもらいます。
特に、次の点をチェックします。
- 誰に向けた資料なのか分かるか
- 顧客の課題から始まっているか
- 商品やサービスの価値が一言で伝わるか
- 他社との違いが明確か
- 導入効果に具体的な根拠があるか
- 専門用語を使いすぎていないか
- 資料だけを読んでも内容を理解できるか
- 最後に何をしてほしいのか明確か
実際の商談で使用した後も、相手から出た質問や反応を踏まえて更新します。営業資料は一度作って終わりではなく、商談を重ねながら改善していくものです。
営業資料作成で重要なのは、商品を詳しく説明することではありません。顧客の課題を明確にし、その課題を自社の商品やサービスがどのように解決できるのかを、分かりやすい順番で伝えることです。
商談用資料と社内検討用資料の違い
営業資料には、営業担当者が商談中に説明するための資料と、顧客が社内で検討するための資料があります。
商談用の資料は、営業担当者の説明を補助する役割が中心です。そのため、文字量を抑え、図解や写真を使いながら、口頭で説明しやすい構成にします。
一方、社内検討用の資料は、商談に参加していない人が読む場合もあります。説明を聞かなくても内容が理解できるように、背景、効果、実績、費用、導入条件などを資料内で補足する必要があります。
実際の営業活動では、「商談で説明しやすいこと」と「資料単体でも内容が伝わること」の両方が求められます。
営業資料のデザインで重要なポイント
営業資料は、見た目がきれいであればよいわけではありません。文字が読みやすく、情報の優先順位が明確で、重要な内容を短時間で理解できることが重要です。
図やグラフ、写真、アイコンなどを適切に使用すると、複雑な内容でも直感的に伝えやすくなります。デザインは装飾のためではなく、顧客の理解を助け、重要なメッセージを正確に伝えるために活用します。
よい営業資料か判断するチェックリスト
営業資料が完成したら、見た目の美しさだけでなく、顧客が内容を理解し、導入を判断し、次の行動に移れる資料になっているかを確認します。
1.目的・ターゲット
- 誰に向けた営業資料なのかが明確である
- 相手の役職や立場に合った内容になっている
- 資料を見た相手に取ってほしい行動が決まっている
- 相手が知りたい情報を優先して掲載している
- 自社が伝えたい情報の一方的な説明になっていない
2.顧客の課題
- 冒頭で顧客の課題を提示している
- 顧客が「自社のことだ」と感じられる表現になっている
- 課題が発生している原因まで説明している
- 課題を放置した場合の損失やリスクを示している
- 課題の大きさを数値や具体例で示している
3.商品・サービスの価値
- 商品・サービスが何を解決するのかを一文で説明できる
- 機能だけでなく、顧客が得られる効果を示している
- 導入前と導入後の変化が分かる
- 自社が選ばれる理由が明確である
- 他社や代替手段との違いを説明している
- 抽象的な表現ではなく、具体的な根拠を示している
4.構成・ストーリー
- 顧客の課題から解決策へ進む構成になっている
- スライドの順番に無理や飛躍がない
- 各スライドの役割が明確である
- 1スライドにつき、伝えたいメッセージが1つに絞られている
- スライドタイトルだけを読んでも全体の流れが分かる
- 不要なページや重複する説明がない
5.文章・表現
- タイトルが単なる項目名ではなく、結論になっている
- 専門用語や社内用語を使いすぎていない
- 一文が長すぎず、短時間で理解できる
- 「高品質」「豊富な実績」などの抽象表現に根拠がある
- 誤字脱字や表記のばらつきがない
- 顧客の視点で「御社」「お客様」などの表現が統一されている
6.信頼性・判断材料
- 導入事例や実績を掲載している
- 導入効果を具体的な数値で示している
- 数値やデータの出典が明記されている
- 顧客の声や第三者評価を掲載している
- 導入までの流れが分かる
- 料金や契約条件など、判断に必要な情報がある
- 想定される不安や懸念に先回りして答えている
7.デザイン・視認性
- 文字、色、図形、余白のルールが統一されている
- 重要な情報が一目で分かる
- 文字が小さすぎず、投影しても読める
- 文章を詰め込みすぎていない
- 図やグラフが、内容の理解に役立っている
- 装飾や写真がメッセージの邪魔をしていない
- 色だけに頼らず、形や文字でも違いを表現している
8.商談後の社内検討
- 営業担当者が説明しなくても、資料だけで概要が伝わる
- 商談に参加していない人でも理解できる
- 経営者、現場担当者、購買担当者などが必要とする情報がある
- 社内で転送・共有されても誤解されにくい
- 導入効果、費用、スケジュールを比較検討できる
9.次の行動
- 資料の最後に、相手にしてほしいことを明記している
- 問い合わせ、見積もり、デモなどの選択肢が分かる
- 担当者名や連絡先が記載されている
- 「お気軽にお問い合わせください」だけで終わっていない
- 相手が次の行動を起こす理由やメリットを示している
チェック結果の目安
全50項目のうち、「はい」の数を集計します。
| 該当数 | 評価 | 改善の考え方 |
|---|---|---|
| 43~50項目 | 非常に良好 | 商談での反応を踏まえて継続的に改善する |
| 35~42項目 | おおむね良好 | 顧客課題、導入効果、根拠を補強する |
| 25~34項目 | 改善が必要 | 構成やメッセージから見直す |
| 24項目以下 | 大幅な見直しが必要 | デザインの前に、目的・ターゲット・構成を再設計する |
すべての項目を満たす必要はありません。資料の目的や商談の段階によって、必要な内容は異なります。ただし、次の5項目に「はい」が付かない場合は、優先的な見直しが必要です。
- 誰に向けた資料なのかが明確である
- 顧客の課題から始まっている
- 商品・サービスが提供する価値を一文で説明できる
- 選ばれる理由に具体的な根拠がある
- 相手に取ってほしい次の行動が明確である
よい営業資料とは、情報量が多い資料や、見た目がきれいな資料ではありません。顧客が「自社に必要な提案である」と理解し、導入を判断し、次の行動に進める資料です。
営業資料を整備するメリット
優れた営業資料を整備すると、営業担当者ごとの説明力の差を小さくし、商談の品質を一定水準に保ちやすくなります。経験の浅い営業担当者でも、資料の流れに沿って説明することで、重要なポイントを漏れなく伝えられます。
また、営業資料の内容は、提案書、Webサイト、展示会資料、動画、メール、営業トークなどにも展開できます。営業活動全体の基盤として活用できることも、大きなメリットです。
営業資料に関するよくある質問
営業資料は複数の見込み顧客に使用する汎用的な資料、提案書は特定の顧客や案件に合わせて作成する個別性の高い資料です。
営業資料では共通する課題やサービスの特徴、実績などを説明します。提案書では、顧客固有の課題、具体的な解決策、体制、スケジュール、見積もりなどを提示します。
営業資料には、顧客の課題、解決策、商品・サービスの内容、導入効果、選ばれる理由、導入事例、料金、導入の流れ、問い合わせ先などを掲載します。
自社が伝えたい情報を並べるのではなく、顧客が導入を判断するために必要な情報を優先することが重要です。
営業資料のページ数に決まりはありませんが、一般的な商談用資料であれば10~20ページ程度が目安です。
初回商談では概要を短くまとめ、具体的な検討段階では事例、機能、料金、導入体制などを追加します。ページ数を先に決めるのではなく、目的達成に必要な情報から判断します。
商談で説明しながら使用する場合はPowerPoint、商談後に共有する場合はPDFが適しています。
PowerPointは内容を編集しやすく、アニメーションも使用できます。一方、PDFは環境によるレイアウト崩れが起こりにくいため、メール送付や社内回覧に向いています。用途に応じて両方を用意するのがおすすめです。
可能であれば、商談用と社内検討用は分けるか、資料だけでも理解できる補足版を用意した方がよいでしょう。
商談用資料は営業担当者の説明を前提に簡潔に作れますが、社内検討用資料は、商談に参加していない人にも導入効果、費用、実績、リスクなどが伝わる必要があります。
特に重要なのは、顧客の課題、導入効果、選ばれる理由を示すページです。
サービスの機能を詳しく説明しても、自社との関係や導入する理由が伝わらなければ、検討にはつながりません。「誰の、どのような課題を、どう解決するのか」が一貫して伝わる構成にします。
料金が明確な商品やサービスであれば、掲載した方が顧客は検討しやすくなります。
個別見積もりの場合は、料金例、価格帯、費用を左右する条件などを示す方法があります。料金を一切掲載しない場合は、顧客が問い合わせ前に検討を中断する可能性もあるため注意が必要です。
導入事例は、商品やサービスの信頼性と効果を伝えるために有効です。
企業名や業界だけでなく、「導入前の課題」「提供した解決策」「導入後の成果」をセットで掲載します。公開できる範囲で具体的な数値を示すと、より説得力が高まります。
生成AIを使って、構成案、文章、タイトル、図解案などを作成することは可能です。
ただし、顧客の課題に対する理解、事実関係の確認、自社独自の強み、デザインの最終調整は人が確認する必要があります。生成AIは完成品を任せる相手ではなく、たたき台を効率よく作るための支援ツールとして活用すると効果的です。
少なくとも半年から1年に一度は内容を見直し、商品、料金、実績、事例などに変更があれば随時更新します。
実際の商談で繰り返し質問される内容や、十分に伝わらなかった点も資料へ反映します。営業資料は一度作って終わりではなく、顧客の反応をもとに改善を続けるものです。
受注への影響が大きい資料、重要な商談で使用する資料、自社の強みを整理できていない場合は、プロへの依頼が適しています。
特に、構成が定まらない、説明しないと伝わらない、社内で資料の品質にばらつきがある、デザインを整えても成果につながらない場合は、構成やメッセージから見直す必要があります。
自社で作成する場合は数日から数週間、専門会社へ依頼する場合は2週間から2か月程度が一般的な目安です。
必要なページ数、構成から検討するか、デザインのみを依頼するか、社内確認の回数などによって変わります。重要な商談で使用する場合は、修正期間を含めて早めに準備することが大切です。
実際の営業資料制作で多い失敗
オリファイが営業資料の制作や改善を支援するなかで、特に多く見られるのが、PowerPointを開いてすぐにページを作り始めてしまうケースです。
目的やターゲットを整理しないまま作成すると、自社の歴史、商品、機能、実績など、社内にある情報を順番に並べただけの資料になりがちです。その結果、情報量は多くても、顧客にとって「自社にどのようなメリットがあるのか」が伝わりません。
実際の営業資料では、次のような失敗が多く見られます。
- 会社紹介やサービス説明から始まり、顧客の課題が後回しになっている
- 機能は詳しく説明されているが、導入効果が分からない
- 「高品質」「豊富な実績」など、根拠のない抽象表現が多い
- すべての情報を載せようとして、重要なメッセージが埋もれている
- スライドタイトルが「特徴」「実績」「導入効果」などの項目名になっている
- 商談で説明する資料と、商談後に回覧される資料が同じである
- デザインは整っているが、競合との違いや選ばれる理由が伝わらない
- 最後に相手へ何をしてほしいのかが明確になっていない
営業資料は、自社について詳しく説明するための資料ではありません。顧客の課題と自社の解決策を結びつけ、検討や意思決定を前へ進めるための資料です。
商談用と社内回覧用を作り分けた事例
ある法人向けサービスの営業資料では、当初、商談時に使用した資料をそのままPDFにして、商談後に送付していました。
商談中は営業担当者が口頭で補足するため、内容を理解してもらえます。しかし、顧客企業内で資料だけが経営者や関連部署へ回覧されると、提案の背景や導入効果が十分に伝わらないという問題がありました。
そこで、営業資料を次の2種類に分けました。
| 項目 | 商談用資料 | 顧客社内での回覧用資料 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 対話を進め、関心を高める | 社内説明と導入判断を支援する |
| 情報量 | 要点を絞る | 判断材料を補足する |
| 文章量 | 少なめ | 資料だけでも理解できる量 |
| 見せ方 | 写真、図解、大きなメッセージ | 比較表、数値、注釈、FAQ |
| 主な内容 | 課題、解決策、導入効果、事例 | 費用、体制、スケジュール、リスク、実績 |
| 使用方法 | 営業担当者が説明する | PDFで転送・共有する |
商談用資料は、営業担当者が説明することを前提として、1スライド・1メッセージに整理しました。
一方、社内回覧用資料には、商談に参加していない人でも判断できるように、導入の背景、費用対効果、導入スケジュール、サポート体制、想定される質問への回答を追加しました。
その結果、営業担当者からは「商談を進めやすくなった」、顧客からは「社内で説明しやすくなった」という評価を得られる資料になりました。
Before/Afterのスライド
改善前
タイトル:当社サービスの特徴
- 豊富な導入実績
- 高品質なサービス
- 柔軟なカスタマイズ
- 充実したサポート体制
- 専門スタッフが対応
改善前のスライドでは、一般的な表現が並んでいるだけで、顧客が得られる効果や他社との違いが伝わっていませんでした。
改善後
タイトル:営業資料の標準化により、担当者ごとの説明品質のばらつきを抑えます
| 導入前 | オリファイによる改善 | 導入後 |
|---|---|---|
| 担当者ごとに資料が異なる | 構成・メッセージ・デザインを再設計 | 誰が説明しても、商品の価値が一貫して伝わる |
| 商談中の口頭説明に依存 | 資料だけでも理解できる情報を追加 | 商談後の社内回覧でも内容が伝わる |
| 強みが抽象的 | 実績や事例を根拠として整理 | 競合との違いを説明しやすくなる |
スライド下部の結論
見た目を整えるだけでなく、営業活動で繰り返し活用できる「伝わる仕組み」として資料を再設計します。
改善後は、サービスの特徴を並べるのではなく、顧客が抱えている問題と導入後の変化を対応させました。これにより、サービスを利用する意味を短時間で理解できるスライドになります。
営業資料を改善した結果
営業資料の改善効果は、見た目がきれいになったことだけで評価するものではありません。商談での説明、顧客の理解、社内検討、問い合わせや受注などが、どのように変化したかを確認します。
例えば、次のような変化が考えられます。
改善前
- 営業担当者によって説明内容が異なっていた
- サービスの特徴を説明するだけで商談が終わっていた
- 顧客から毎回同じ質問を受けていた
- 資料を送付しても、その後の検討状況が分からなかった
- 商談後に顧客社内で提案内容を説明し直す必要があった
改善後
- 営業担当者が共通の流れで説明できるようになった
- 顧客の課題から会話を始められるようになった
- よくある質問への回答を資料内に掲載できた
- 商談に参加していない決裁者にも内容が伝わりやすくなった
- 見積もり、デモ、次回商談など、次の行動を提案しやすくなった
数値を取得できる場合は、次のように掲載すると説得力が高まります。
| 指標 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 平均説明時間 | ○分 | ○分 |
| 次回商談への移行率 | ○% | ○% |
| 見積もり依頼率 | ○% | ○% |
| 成約率 | ○% | ○% |
| 営業資料の作成・修正時間 | ○時間 | ○時間 |
成果を紹介する際は、受注率だけでなく、説明時間の短縮、営業品質の標準化、社内回覧のしやすさなども重要な改善効果として扱います。
山田進一が資料を確認する際のチェックポイント
山田進一が営業資料を確認する際は、最初から色やフォントなどのデザインを見るわけではありません。まず、営業資料として成果につながる構成になっているかを確認します。
特に重視するのは、次の7点です。
1.誰に向けた資料なのか
経営者、部門責任者、現場担当者など、相手によって必要な情報は異なります。対象が曖昧な資料は、誰にとっても決め手のない内容になりがちです。
2.顧客の課題から始まっているか
会社紹介や商品説明から始めるのではなく、顧客が抱えている課題を最初に提示できているかを確認します。
3.提供価値を一文で説明できるか
「誰の、どのような課題を、どう解決するのか」を一文で説明できなければ、資料全体のメッセージも曖昧になります。
4.機能ではなく、導入後の変化が示されているか
機能や仕様だけでなく、売上、コスト、時間、品質、リスクなどがどのように変わるのかを確認します。
5.選ばれる理由に根拠があるか
「高品質」「柔軟な対応」「豊富な実績」と書くだけでは不十分です。数値、事例、体制、独自の仕組みなど、裏付けが必要です。
6.説明者がいなくても内容が伝わるか
商談後、営業資料は顧客企業内で転送される可能性があります。商談に参加していない人が見ても、提案の背景と価値を理解できるかを確認します。
7.次の行動が明確か
資料を読んだ相手に、次回商談、見積もり、デモ、問い合わせなど、何をしてほしいのかが明確になっているかを確認します。
デザインは、内容を伝わりやすくするための手段です。構成やメッセージが曖昧なまま見た目だけを整えても、成果につながる営業資料にはなりません。
「見た目はきれいだが成果につながらない資料」の特徴
見た目がきれいな営業資料であっても、必ずしも商談や受注につながるとは限りません。
成果につながらない資料には、次のような特徴があります。
- 写真やイラストは多いが、何を伝えたいのか分からない
- ブランドイメージの説明が中心で、顧客の課題が掲載されていない
- 商品の機能は分かるが、導入するメリットが分からない
- 重要な数値や結論が、小さく目立たない位置に置かれている
- 「革新的」「高品質」「ワンストップ」などの抽象表現が多い
- 図解が装飾になっており、情報の関係を示していない
- 導入事例に、課題や成果が掲載されていない
- 競合や代替手段との違いが説明されていない
- 最後が会社概要や「お問い合わせください」で終わっている
営業資料のデザインで重要なのは、華やかさではなく情報の優先順位です。
顧客に最も伝えたい結論が一目で分かり、その根拠を短時間で理解できるデザインが、成果につながるデザインです。
自作・生成AI・プロを使い分ける判断基準
営業資料は、すべてをプロに依頼する必要はありません。目的、重要度、納期、社内のリソースに応じて、自作、生成AI、プロへの依頼を使い分けます。
| 判断項目 | 自作が向いている | 生成AIが向いている | プロへの依頼が向いている |
|---|---|---|---|
| 目的 | 日常的な説明や社内共有 | 構成や文章のたたき台作成 | 受注に影響する重要な商談 |
| 内容 | 構成や伝える内容が決まっている | 情報整理から始めたい | 強みや訴求内容から整理したい |
| 品質 | 最低限伝わればよい | 短時間で一定水準にしたい | 競合との差を明確にしたい |
| 納期 | 作成時間を確保できる | 短期間で案を増やしたい | 限られた期間で完成度を高めたい |
| 再利用性 | 一度だけ使用する | 複数案を試したい | 長期間、全社で使用する |
| 影響度 | 失敗しても影響が小さい | 担当者が内容を確認できる | 失注時の損失が大きい |
自作が適している場合
- 小規模な商談や社内説明に使用する
- 内容や構成がすでに決まっている
- 頻繁に内容を変更する必要がある
- 社内に資料作成の知識や人材がある
生成AIが適している場合
- 構成案やスライドタイトルを考えたい
- 長い文章を短く整理したい
- 顧客課題や訴求ポイントの候補を出したい
- 複数の表現や図解案を短時間で比較したい
生成AIは、たたき台の作成には有効ですが、事実関係、自社独自の強み、顧客に合った内容になっているかは、人が確認する必要があります。
プロへの依頼が適している場合
- 重要な新規顧客や大型案件で使用する
- 全社で使用する標準営業資料を作成する
- 自社の強みをうまく言語化できていない
- デザインを整えても成果につながらない
- 商談用と社内回覧用を体系的に整備したい
- 資料の品質が営業担当者ごとに異なっている
実務では、生成AIで情報や構成のたたき台を作成し、社内で事実を確認したうえで、重要な資料をプロが仕上げる方法も効果的です。
作成費だけで判断するのではなく、その資料が受注や売上に与える影響と、社内で作成する時間まで含めて選ぶことが重要です。
まとめ
成果につながる営業資料とは、商品を一方的に説明する資料ではありません。顧客の課題を明確にし、その課題に対して自社の商品やサービスがどのように役立つのかを、納得できる形で示す資料です。
営業資料は、顧客の理解を深め、社内検討を進め、問い合わせや商談、契約につなげるための重要な営業ツールです。

執筆者・監修者プロフィール
山田進一 株式会社オリファイ 代表取締役・プレゼンマスター。
マイクロソフトMVP(PowerPoint部門)を18年連続受賞し、連続受賞日本一であり通称「パワポ日本一」。パワーポイント/PowerPoint・プレゼンテーション分野の専門家として、営業資料、提案書、会社紹介資料、セミナー資料など、企業向けプレゼン資料の企画・構成・デザイン・制作を数多く手がける。これまでに、大手企業から中小企業まで幅広い業種の資料作成・改善を支援。見た目だけでなく成果を出す資料作成を重視し、PowerPoint資料作成代行、プレゼンテーションコンサルティング、企業研修・セミナーなどを通じて、多くの企業の売上アップを支援している。詳しくは 山田進一プロフィール をご覧ください。

